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息子から、離婚がしたいと連絡があった。
私にずっと優しい息子がそんなことを言うのだから、よほどのことがあったのだろう。
息子に電話をし、確認をした。
「あなた、無理してない?」
「ちゃんと大切にされてるの?」
「夫婦のスキンシップは取ってるの?」
いくつかの質問をしたが、帰ってきた言葉はひとつだった。
「…別れれば、解決すると思う…。」
絞り出したような、小さくかすれた声だった。
昔から、自分よりも周りを優先して我慢強い息子。
彼女に言い返すこともせずに、飲み込み続けてきたのだろう。
ここまで弱った息子を、見たことがない。
胸の奥がざわついた。
何度も感じたことのあるこの感情の正体は、考えなくても分かっていた。
結婚式の直前、「別れたい」と言った息子を止めた。
それから結婚式の日を迎えて楽しそうにしている姿に安心した。
妊活の末、授かったことを聞いたときは「うまく生活をしている」と思っていた。
「一体、何が起きたのだろう?」
「別れたい」と言ったとき、受け入れるべきだったのだろうか…?
でも、それなりの幸せも感じた瞬間はあったはず。
本来なら、嫁に直接連絡を取るべきではないかもしれない。
上の子の時、そのことで失敗している。
でも、息子はもう壊れるギリギリのところに立っていた。
私の性分が、突き動かした。
何もせずにはいられず、気が付けば電話のコールを鳴らしていた。
何を言ったのかは正直あまり覚えていない。
ただ、嫌な言葉を選んだような気がする。
それなのに、怯むことのない彼女の姿勢。
腹が立ったことはハッキリと覚えている。
「優しい息子がいつも折れていたのだろう。」
電話口の態度が、その想いを強めた。
このまま彼女と一緒に生活をすれば、息子は壊れてしまう。
そんな恐怖を覚えた。
離婚を止めるための電話をしたつもりだったが、
「離婚した方がいい」と確信するためのものとなった。
優しい息子は、自分では言うことができないのだろうと思う。
だから私が、背中を押してあげなくては。
「あなたの人生なんだから、あなたが笑顔で生きることができる道を選びなさい。」
息子へはそう言った。
子どものことは、堂々と生きている彼女に任せたらいい。
そもそも息子は、「子どもをおろせ」と言った。
それでも産むと決めたのは彼女。
だから大丈夫。
何も悪いことはない。
兄弟の中でもいちばんやさしくて、人一倍人の顔色をうかがう息子がここまでつらい思いをしてるのだから。
優しい人間は、強い人間に利用される。
何度も私はそれを見てきた。
私が生きているうちは、優しい息子のピンチを誰よりも先に見つけて守ってあげなくては。
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