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連載もの

占い好きの占野は、何かあったときはもちろん、何もなくとも必ず占いをした。
占野はそれを「趣味」として楽しんだ。
本当のところは、「よりどころ」だった。
本人は気が付かないフリをした。
自分で判断することから逃げるための、占いだったのかもしれない。
昔付き合っていた彼氏と別れたとき、友人たちから「はじめからそんな気がしていた。」と口々に言われた。
「それならば、そう思ったときにすぐ言って欲しかった」
その想いが強く残り、先回りができる占いを信じるようになっていった。
相性を見て悪ければ、初見がどんなに魅力的でも好きではなくなった。
相性が良いとされる相手とは、少しずつ距離を縮めた。
相手の態度が冷たくなったときには、「相手が今何を考えているか」を占った。
更には、「今連絡をしてもいいか」を聞いてはその通りに動いた。
気が付けば、朝の星占いが日課となり、その日のラッキーカラーを何らかのかたちで身に着けた。
こうして恋愛運からハマった占いは、
職場や友人など周囲との人間関係、仕事・運気の流れなど、総合的に信じるようになった。
迷ったときには、占いで判断した。
「霊視」ができると有名な人の名を聞けばそこに足を運んだし、友人が「行ってみたい占いがある」と言えば一緒に予約を取った。
手相は変わると言われるので、定期的に視てもらった。
占野にとっては「冷静に判断するための手段」だった。
そこには「良い」も「悪い」もない。
ひとつの判断基準だった。
ある日、友人から紹介された占い師によって、その日々は突然幕が下りることになる。
占野はその占い師によって、自分をより深く知ることとなった。
「本来のあなたは、失敗から学び成長して成功する人だ」
そう言いながらまっすぐと強いまなざしを向ける占い師の視線。
返す言葉がないまま、占野はその視線を外すことが出来なかった。
その視線を外せばその瞬間に、つかめるはずのものを見送ってしまうような気がした。
そして気が付いた。
「占いは、確かに私を導いてくれた。
でもその間、
私は自分の人生を生きていただろうか」
そう思ったとき、何故ここまで占いに肩入れをしてきたのか分からなくなった。
それから占いをみることをやめ、その時間を自分自身との対話に使うようになった。
そうしていると、自分が歩きたい道がハッキリと見えてきた。
そして、その道が自分の軸なのかもしれないと気が付いた。
でもまだ確信はなかった。
恐る恐る、その道に一歩足を踏み出してみた。
意外と歩くことができた。
思っていたよりも、ずっと普通に。
それでも不安はそのままついてきた。
「いつかまた転ぶかもしれない。」
でもそれは、誰かに占ってもらって導かれることで見えていた道よりもずっと美しい気がした。
こうして占野は占いに頼らずに、ゆっくりと自分の足で歩くことができるようになっていった。
自分でも気が付かないうちに「よりどころ」となっていた占い。
「歩きたい道」という帰る場所が出来たことで、よりどころはそれに代わった。
誰かと出会ったタイミングで、
何かを始めたタイミングで。
人生のふとした瞬間に、
占野のようなことが誰にも起こりうる。
あなたが、その出会いや出来事に意味を見出すことが出来れば。
それがいつか、あなたの「歩いていく道」になるだろう。
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